「リースに関する会計基準(案)」の公開草案の公表(2023年5月2日)
企業会計基準委員会は2023年4月26日開催の委員会において、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」及び関連する基準案等の公表を承認しました。これは、2016年1月に国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」が公表され、同年2月に米国財務会計基準審議会(FASB)よりTopic842「リース」が公表され、国際的な会計基準ではオペレーティング・リースも含むすべてのリースについて資産及び負債を計上することとされ、日本としても財務諸表の国際的な比較可能性を担保するべく、現行基準の改正について検討を重ねてきましたものが今般公開草案の公表に至ったものです。
改正案の特徴として、IFRS第16号の考え方を基礎とするものの、IFRS第16号の全ての定めを採り入れるのではなく、主要な定めのみを採り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ、IFRSを任意適用して連結財務諸表を作成している企業がIFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となることを目指した会計基準が提案されています。また、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定める、又は、経過的な措置を定めるなど、実務に配慮した方策を検討するとしています。
改正案における内容で影響が大きいと思われるのが、借手の会計処理です。リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、原則全てのリースを金融の提供と捉えて貸借対照表には使用権資産及びリース負債を認識します。また、損益計算書には当該使用権資産に係る減価償却費の計上及びリース負債に係る利息相当額を計上する方法が提案されています。現行のリース基準ではオペレーティング・リースは定額の費用を計上するのみでしたので、会計処理が変わることで財務諸表の見え方も随分と変わると考えられます。
公開草案は2023年8月までコメントを募集しており、その後基準が最終化され会計基準の公表となりますが、原則的な適用時期は会計基準の公表から2年程度経過した日とされています。一方で早期適用も可能になる見込みです。
現行と比較して資産(使用権資産)及び負債(リース債務)が増加することで自己資本利益率やROAなどの主要な財務指標にも影響が生じる可能性があります。今後の基準最終化の動向を見守る必要がありそうです。なお、補足として少額リースに関する簡便的な取扱いは改正後も継続する予定であり経理実務への配慮が見て取れます。
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