上場会社取締役の指名・報酬関連の最近の動向
東証の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2022年8月3日)によると、プライム上場企業において任意の指名委員会を設置している会社の割合は61.6%(前期比+5.6P)、任意の報酬委員会を設置している会社の割合は62.2%(前期比+5.5P)と、いずれも上昇している。任意の指名委員会・報酬委員会を設置するプライム上場企業のうち、構成員の過半数を社外取締役とする会社は約9割、委員長を社外取締役とする会社は6割まで増加し、委員会における独立性の確保が進捗していると言える。経済産業省の「改定CGSガイドライン」(2022年7月19日)の【経営陣の指名・報酬の在り方:指名委員会・報酬委員会の構成・委員長】の記載によると、「任意の指名委員会・報酬委員会について、構成員の過半数を社外取締役とすること及び委員長を社外取締役とすることを検討すべきである。」とされており、今後も増々、委員会の独立性が進むものと思われる。
取締役の個人別報酬等について、取締役会で決定せず再一任する会社が多数(68.8%)を占め、再一任先として任意の報酬委員会が増加(20.1%、前期比5.9P)しているものの、代表取締役が最多で48.7%を占めた。改定CGコードを受け、法定や任意の報酬委員会を設置する企業が増加したにもかかわらず、報酬決定権を報酬委員会に委ねずに経営トップが握る企業がなお目立つと言える。
2021年度全株懇調査報告書(2021年10月)によると、A(割合の定め:有り、開示:有り)36.2%、B(割合の定め:有り、開示:無し)25.7%、C(割合の定め:無し)22.1%、D(固定報酬のみ)16.0%の構成となっている。機関投資家からの要請もあり、今後はA(割合の定め:有り、開示:有り)の割合が増加していくものと思われる。
従来、役員賞与の参考指標として営業利益・当期純利益・ROE・1株当たり年間配当金等の短期指標を使う会社が多かったが、機関投資家からの要請を受けて、中計目標と連動したKPIの導入や、非財務指標への取り組みをKPIとする会社が増えてきている。例えば、キリンHDでは、複数のESG指標を組み合わせるスコアーカードを採用して、中長期インセンティブの20%が非財務指標により決定する仕組みとなっている。経済産業省の「改定CGSガイドライン」(2022年7月19日)の【経営陣の報酬の在り方】の記載によると、「非財務指標を用いる場合には、取締役会や報酬委員会において、経営戦略・経営計画を踏まえた議論を十分に行った上で、用いる指標や定量目標を明確に定め、当該指標を選択する理由や企業価値との関係性について、透明性の高い開示を行うことが望ましい。」とされており、少しずつ非財務指標の採用が進むものと思われる。
プロネクサスの「招集通知調査結果 2022年度版」によると、スキルマトリックスの掲載企業は日経225採用銘柄で212社(95.5%)、日経500採用銘柄で457社(92.7%)となった。その一方で、スキルに関する具体的な説明が記載されている企業は、日経225採用銘柄で21社(9.9%)、日経500採用銘柄で52社(11.4%)となっている。各スキル項目は会社としてどのような意味合いで定義しているのか、会社の長期ビジョン実現のために必要なスキルを設定するべきだ、との意見も多く、今後は具体的な説明の記載が進んで行くものと思われる。
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