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TOKOニュースレター Vol.142

内部統制報告制度の見直しについて検討中(速報)

金融庁は9月から内部統制報告制度の見直しに向けた議論を開始しています。公認会計士や上場企業では早々に審議内容について確認したいところですが現在、公表された金融庁、企業会計審議会内部統制部会議事資料等によれば、次のような論点が議論され見直しが行われる予定です。現状の内部統制報告制度の課題を再考してみたいと思います。

1.内部統制報告制度の見直しの検討理由

内部統制報告制度はカネボウ粉飾決算、西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載を契機に2008年導入されました。制度導入以来14年経過し、これまで企業の経営管理・ガバナンスの向上に一定の効果はあったものの、近年、内部統制報告書を提出した後、不正発覚もあり、現在のこの制度の実効性に懸念があるという指摘があり、また、国際的な内部統制・リスクマネジメントの議論も進展しています。これらを踏まえ、金融庁では上場企業の情報開示の信頼性を確保するための管理・評価体制について投資家に公表する「内部統制報告制度」の実効性向上に向けた見直しの議論が始まっています。

2.論点

(1)内部統制の基本的枠組み

社会構造の変化等に伴う内部統制上の課題に対処するため、基本的枠組みについて見直しを行うことについて、例えば、内部統制基準・実施基準等の中で、内部統制とERM(全社的リスク管理)やガバナンスとの連携に関する記述を明確化すべきかどうか。また、その他、COSO2013、コーポレートガバナンス・コード、 ERMの議論等で考慮すべき事項はないか。また、ITの利用及び統制の在り方について、内部統制基準・実施基準等に織り込むべき論点はあるか。経営者による内部統制の無効化について、内部統制基準・実施基準等に織り込むべき論点はあるか。等が議論されています。

(2)経営者による内部統制の評価範囲

経営者によるリスクベースの評価がなされておらず、経営者の評価範囲外で「開示すべき重要な不備」が検出される企業が一定程度みられます。例えば、開示すべき重要な不備が認識された直近数年の訂正内部統制報告書のうち、当該不備が経営者による評価範囲外から認識されたものは2~3割程度みられたようです。

その原因の一つとして、評価範囲について、企業が選定基準の定量的な例示に偏重して評価範囲を決定し、リスクの高い対象を含めることができていないといった指摘がみられ、事業の特性など各企業のリスクに応じた基準改正、リスクベースで範囲及び対象を決定すべきとのご意見もあるようです。

(3)監査人による内部統制監査

経営者が実施した内部統制の評価結果に対して監査人が意見を出す現行の枠組みについては、経営者が内部統制を整備・運用する役割と責任があることを明確にした上で、同一の監査人が財務諸表監査と内部統制監査を一体として効率よく実施することが可能であり、一定程度機能していると評価しています。

一方で、経営者によるリスクベースの内部統制評価を促していく観点から、例えば、経営者と監査人の早期の緊密な協議を促すことや、内部統制報告書の中で、監査人が評価対象とすべきであると判断する領域が経営者の内部統制の評価にどのように反映されたのかを明らかにするなど、経営者と監査人との議論の促進・透明性の向上を図ることが考えられています。監査人による内部統制監査をダイレクト・レポーティングに変更し、監査人が財務報告に係る内部統制に対する監査意見を表明する制度への変更も検討されているようです。

(4)内部統制報告書の訂正時の対応

現状では、不正の発覚により会社が内部統制報告書の訂正を行った場合、それに対する監査証明は必要とされておらず、訂正内部統制報告書の記載内容について第三者が適切かどうか評価することとされていません。訂正内部統制報告書の記載内容について、監査人が記載内容の妥当性を検証し、訂正内部統制監査報告書を提出すべきとの意見があり検討中です。また、企業不祥事の端緒は非財務情報にあり、財務報告上の会計数値と直接結びつかないことも多いのですが、規制当局は内部統制基準・実施基準に非財務報告を加えることを検討すべきとの意見もあるようです。

3.今後の方向性

10月13日から企業会計審議会 内部統制部会で具体的な検討が行われており、年内には改正の方向性が示され見直しに係る草案が公表される見通しです。内部統制報告制度導入以来14年経過し大きく企業環境は変化しており、今後の変更内容を早々にキャッチアップして準備していく必要がありそうです。

以上

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