①監査報告書の押印不要、電磁的交付等
2021年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」では、48の法律において押印を求める各種手続について押印を不要とするとともに、書面の交付等を求める手続について電磁的方法により行うことを可能としている。公認会計士法もこの中に含まれており、2021年9月1日から施行されている。
2021年5月 12 日付けの公認会計士法の改正において、監査報告書への押印が廃止され、監査報告書等の交付を電磁的方法により行うことが可能となったこと等に対応して、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び公認会計士法施行規則においても関連する改正が行われた。日本公認会計士協会では、これらの改正に対応するため、押印等の記載を含む監査基準委員会報告書の改正を行い、 2021 年8月 19 日付けで公表した。
なお、監査証明を電磁的方法で行うには、あらかじめ被監査会社の承諾が必要となっております。
②「その他の記載内容」の記載と会社法監査等のスケジュールの検討について
監査基準委員会報告書720 「その他の記載内容に関連する監査人の責任」(以下「監基報 720 」といいます。)が改正され、2022年3月決算に係る財務諸表の監査から適用となります。
改正後の監基報720 では、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書を除いた部分の記載内容(以下「その他の記載内容」といいます。)について、監査人の作業を明確にするとともに、監査報告書に必要な記載を求めることとしており、従来以上の対応が必要となります。
会社法監査において、「その他の記載内容」は事業報告及びその附属明細書となります。
事業報告及びその附属明細書は、会計監査人の監査対象ではない点は従来と同様ですが、改正監基報 720 では監査人は監査意見を表明しない場合を除き、「その他の記載内容」に対する作業の結果を監査報告書に記載しなければなりません。
このため、会社法監査において会計監査人は、監査報告書日までに、監査対象となる計算書類等に対する監査手続のみならず、「その他の記載内容」に対する作業等を完了できるように、事業報告及びその附属明細書の入手時期(注)及び手続も考慮した上で監査スケジュールを検討する必要があります。これにより、会社法監査報告書日が、従来に比較して後の日程となることも考えられますので、監査スケジュールについて、経営者や監査役等と十分なコミュニケーションを行う必要があります。
なお、改正監基報720 は法定監査又は任意監査を問わず、また、学校法人や非営利、公会計等の企業以外の監査にも適用されます。これらの監査業務に従事する会員は上記と同様に、今後それぞれの監査における「その他の記載内容」の範囲やその入手時期等にご留意いただき実務を進めていただくようお願いいたします。
(注)監査人は、事業報告及びその附属明細書の最終版を適時に入手するため、経営者と適切な調整を行うことになります。
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